【シングルレビュー】「CHAI - Nobody Knows We Are Fun」

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5月21日にUSのインディ・レーベルから発売になる3rdアルバム「WINK」からの先行曲となる本曲は現在のCHAIを表すような1曲になってました。

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CHAIについては前作の「PUNK」がPitchforkで高評価を受けるなど海外メディアからの評価も高く、普段邦楽を聞かない私でも知っていたバンドだったのですが、彼女達の存在は今や日本の音楽業界にとってかなり重要な鍵になっているようにも思えます。

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というのも、彼女たちは日本にはびこるルッキズムに正面から立ち向かっているからです。今の日本は何よりもルッキズムを尊重する体制です。日本の音楽番組を見てみると、自分たちで音楽を生み出さない、また音楽的な才能を持っていない「アーティスト」と呼ばれている人たちが大勢出演しています。彼らは一般的にルックスがいいとされ、与えられた音楽に口を当て、笑顔で出演することで「アーティスト」になれるのです。そして視聴者もそれを求めます。このブログを始めてYouTube等で邦楽のミュージックビデオをみる機会ができましたが、コメントを見て驚いたのは圧倒的にルックスに関するコメントが多いことです。また先日レビューしたKing Gnuさんのギターボーカルの常田さんの交際報道が先日報じられ、Twitterのトレンドに出てきたのコメントを見てみたのですが「ショックだ」とか「それでも聴き続けます」みたいなコメントが大量に出てきてこの感覚には驚きました。自分の好きなアーティストに求めるのは音楽性でしかないと思っていたのですが、ルッキズムに付随して日本では偶像化が激しいことも体感しました。

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その現状が何十年も前から音楽的な発展は遂げずに、ルッキズムと心中することにした今の日本を作っているのだと思いましたが、そんな日本で彼女たちは「NEOかわいい」を掲げ、今の自分たちが最高であるということを歌います。それは本曲も例外ではありません。

Oh my gosh
Nobody knows we are fun
This is a big issue
No.. lalalalala
Uh, wow, oh my gosh
Nobody knows we are fun
This is a big issue
Nobody knows we are smart 

「私たちが最高ってことに気づいていない」と主張する本曲のこれまでのサウンドを覆すようなエレクトロサウンドは世界進出に向けての意気込みのようにも感じられ、CHAIがまさに最高に輝いていることを体現しています。決して背伸びをせずに誰にも媚びないCHAIサウンドは世界の人に、そしてルッキズムに支配された日本人にも届きます。そしてCHAIは歌います。

ヘイ、それってさ
イカしてんのかい?
知ったこっちゃない
Yes, come with us
ヘイ、もっとさ
馬鹿したいでしょ?
フリしてんなよ
Yes, come with us

CHAIの音楽は誰も置いていきません。CHAIと共にルッキズムからの解放を、それが邦楽に残された唯一の希望なのかもしれません。